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ハードとソフトをつなぐもの

  「コンピューター ソフトなければ ただの箱」というわけで、ハードウェアとソフトウェアが揃ってはじめて、パソコンは機能を発揮することができます。
 私たち人間も、ハードウェア(身体)とソフトウェア(心)が必要です。人間は生き物ですから、さらにそこへいのちを吹き込まなければなりません。

 禅には「調身・調息・調心」という言葉があります。禅に限らず、ヨーガや気功でも、自分を進歩させ調和させるために、身体を調え、息を調え、心を調えることが必須要件です。
 息は「イキ」という音からみても、「イキル」に通じます。私たちにいのちを吹き込むのは息です。調身と調心の間にあって、身心統一を図り、いのちを活性化するのが調息の役割です。

 調息とは、日頃無意識に行っている呼吸を、意識的に念をこめて行うことです。お釈迦様は、「弟子たちよ、入息出息を念ずることを実習するがよい。かくするならば、身体は疲れず、眼も患まず、観えるままに楽しみて住み、あだなる楽しみに染まぬことを覚えるであろう。(雑阿含経)」と言っています。

 最近「マインドフルネス呼吸法」という言葉を多く見聞きしますが、、このお釈迦様の「入息出息を念ずる」ことを言っています。
 藤田霊斎師を継いで、調和道協会の会長となった村木弘昌博士は、「入息、出息を念じつつ行うならば、それは自ずから丹田呼吸になっているのです。」と、著書『釈尊の呼吸法』に書いています。
 根を養えば、幹や枝や葉や花や実は自ずから育ち繁り咲き、実ります。丹田呼吸の実修は、ハードとソフトをつなぎ、全体を活かすための根源的な修養法なのです。

 
 

「創世記」と丹田呼吸

 「主なる神は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。」と、『旧約聖書「創世記』にあります。
 土の塵で形づくられたというところに興味を引かれますね。ヘブライ語では、土(アダマ)と人(アダム)とは、音が似ています。私たちの体の成分は、土とほとんど同じだそうです。炭素・酸素・水素・窒素・リン・鉄・マンガン・亜鉛・・・等々、全て土にも人体にも共通するものばかりです。
 ちなみに、体を構成している元素を原価計算すると、せいぜい数千円程度だそうです。
 こんなに安い原材料からできているのでは、万物の霊長も形無しですが、「主なる神」から「命の息を吹き入れられた」ことによって「生きる者」となったということで、一気に価値は上昇するちうわけです。

 丹田呼吸法を実際にやってみて気づくことは、吐く息を丁寧に意識を集中して行なっていると、吸う息は自然に入ってくるような感じがすることです。それはまさに、「命の息を吹き入れられた」という感じがします。
 このあたりも、創世記の記述は、呼吸の正しい在り方を示唆しているように思います。

丹田呼吸と腹圧

 丹田呼吸の要旨は、「呼気性の持続腹圧」つまり腹圧を維持しながら息を吐くということです。ですから、丹田呼吸法は、呼気性の持続腹圧を身につけるための方法ということになります。
 呼気性の持続腹圧によって、下腹部に充実感を覚え、気合がこもった状態になります。そうすると、気持が前向きになって、積極的な考えになります。身体面でも、血行が良くなり、姿勢が調ってきます。
 呼気がうまくできると吸気も自然に調いますから、呼気に意識を集中するのです。これを「呼主吸従」と言います。

 腹圧を形成するには、横隔膜、腹横筋、骨盤底筋群の三つの筋肉がバランスよくはたらくことが必要になります。
 横隔膜はドーム球場の屋根のような形をした膜状の筋肉で、腹腔の上部を形成しています。横隔膜は緊縮すると、下方に下がってきます。下がって腹腔の容積が狭くなった分、腹腔に圧力が生じるのです。
 骨盤底筋群は第二の横隔膜とも呼ばれ、腹腔の底部を構成しています。緊縮した時に横隔膜に対応して上方に上がることで腹圧を生じさせます。下降する横隔膜と上昇する骨盤底筋群によって、上下から腹圧を作りだすのです。
 腹横筋は、下腹部の外側から順に、外腹斜筋、内腹斜筋、その一番内側にあって下腹部を差さえ保護しています。特に腹横筋は、コルセットのように下腹部を引き締めるはたらきをしています。この三つの筋肉に加え、後方の壁となって圧力の逃げを防ぐ仙骨も、腹圧構成の重要メンバーとなります。

 何事をするにもコツがあります。このコツをつかむことを、呼吸を呑み込むとも言ったりします。そして、コツをつかむコツは、丹田呼吸法にあります。丹田呼吸法は、諸芸・諸道に通じる大原理であるのです。

*7月16日(火)の養根塾は、休まずに行います。

身言葉と丹田呼吸

 かつての日本語には、「身言葉(みことば)」が豊富でした。「目が高い」「鼻にかける」「口が軽い」「顔を立てる」「顎を出す」「肩を落とす」「腕を磨く」「胸にしみる」「腹を据える」「腰抜け」「尻が重い」「足が地につく」などの言葉です。
  このごろは「身言葉」があまり使われなくなってきています。身体に対する感性、即ち身体感覚が鈍くなったからかもしれません。それは、雑踏で、カバンなどの持ち物を行き違う人にぶつけて、平気でいたり、人の直前を、会釈もせず傍若無人に通り過ぎる人が多いことからも考えられます。
 江戸には江戸動作といって、混み合う中でのマナーがしっかりできていたようです。たとえば、傘を差して擦れ違うとき、お互いに傘を少しかしげる「傘かしげ」。肩がぶつからないようにお互いに肩を引いてよける「肩引き」などです。これも身体感覚がしっかりしていたから、自然に身についたのでしょう。
 こうした身体感覚を復活させるには、身言葉を復活させることも一つの方法だと思います。そしてもう一つ、深くユッタリとした呼吸を工夫することです。身言葉を復活させ、丹田呼吸法のを身に付けることで、身体感覚を目覚めさせ、ひいてはいのちの尊さを自覚させます。さらにそれによって、エネルギーに満ち満ちた、積極的な生き方が展開されていくことになるものと思います。

呼吸と血流

 呼吸法の真髄である調和道丹田呼吸法を創始した藤田霊斎師は、多くの道歌を残しています。その一つに次の歌があります。

  純良な血をよく作りよくまわしこりを除くが健康のもと

 健康のための根本原則は、きれいで質の良い血液を造り、その血液をよく循環させてこりを取り除くことなのだ、というのです。
 単細胞生物ならば、体の表面からだけで体に必要なものの取入れと排出ができますが、人間のように60兆もの細胞が集まった組織になると、皮膚からだけでは全身の細胞が必要とするものの供給や排出は不可能です。
 そこで栄養素や酸素が豊富な純良な血を造ることが健康のために必要になります。そしてその血液を「よくまわし」てやらなくてはなりません。せっかくつくった純良な血も、全身に循環させなければ何もなりません。
 次に、「こりを除く」ことが大切になります。こりとは、老廃物を積んだ血液が停滞し、そこに老廃物が堆積した状態です。それはちょうど流れが悪いためにヘドロが固まっている河川のようなものです。

 「純良な血をつくる」「よくまわす」「こりを除く」ためには、丹田呼吸が必要であるこの道歌は主張しているわけです。
 純良な血液を造るためには、食べ物と共に呼吸が大切です。浅くて弱い呼吸では、十分に酸素の取り入れも二酸化炭素の排出も思うようにいきません。劣悪な呼吸は、純良とは程遠い、汚れた血を体内においておくことになってしまうわけです。

 血液の循環をよくするにも呼吸が大事です。特に丹田呼吸は、血液の循環を促進します。丹田呼吸は横隔膜が活発にはたらき強い腹圧を発生させますが、この腹圧が腹部の静脈血を心臓に向かって絞り上げるはたらきをするのです。
 腹部は空洞になために、汚れた血液がたまりやすい構造になっています。多くの人が、全体の半分以上の汚れた血を腹に長時間ためているといわれています。その汚れた血液を、丹田呼吸による腹圧が心臓に返すのです。 ですから、腹は第二の心臓であると、東大教授の細菌学の権威者で文化勲章を受章し、腹式呼吸の提唱者としても有名だった二木謙三博士は言っています。

 このように、「純良な血をつくる」「よくまわす」「こりを除く」という三つの作用は、丹田呼吸によって一気に片づいてしまいます。
純良な血は循環がよいく、逆ににごって汚い血は循環しにくくなります。逆によい循環は純良な血をつくります。「三寸流れて水清し」というわけです。そして、純良な血がよくまわれば、こりはおのずから除かれ、身心は根本から健康になるのです。 
プロフィール

鈴木光彌

Author:鈴木光彌
1943年(昭和18)東京都葛飾区水元に生まれる
法政大学法学部卒
在学中は応援団に所属し、副団長を務める
今も、人々に生きる勇気と喜びを鼓吹する応援団を任じている
昭和55年、公益社団法人調和道協会に入会し、丹田呼吸法を学ぶ
以来研鑚を重ね、現在養根塾を主宰して活動中
著書:「丹田湧気法入門」柏樹社(共著)、「丹田を創る呼吸法」BABジャパン、「丹田を創って『腹の人』になる」小学館、「藤田霊斎 丹田呼吸法」佼成出版社

【養根塾】
◇会場: 高輪アンナ会館
東京都港区高輪2-1-13
都営浅草線 泉岳寺駅A2口徒歩5分
◇日時:毎週火 1:00~3:00PM
◇会費:1000円/1回
自由ヶ丘教室 第2・4金 10:30AM
若葉教室 毎週金 6:00PMも併設
お問合せ 090-5405-4763 鈴木
Eメール
mitsuya@wf7.so-net.ne.jp

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