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臍下に気を充たす

 気息(いきあい)を臍下に充実(みた)しむれば、よく百病を除くということ、実(まこと)にその験(しるし)あり。
  
 平野元良(寛政2〈1790〉~慶応3〈1867〉)という、江戸時代末期に名医と謳われた人物の著した『養生訣』にある文です。、丹田呼吸法や健康法などについて触れられていて、当時のベストセラーです。
 平野元良の丹田呼吸法は、東嶺、寺田宗有、白井亨と伝わった白隠禅師直系に当たります。
 医師でありながら剣術においても、寺田・白井という幕末の両剣豪の道統に連なるだけに、かなり強かったようです。元良の直接の師白井亨は、丹田呼吸法の習練により、独自の剣の道に達した人です。
 完全な丹田呼吸は、「気息を臍下に充実」させることに外なりません。それによって様々な病気が治ることが、自分の体験からも断言できると元良は言っているのです。
 丹田呼吸を実修してみると、元良の言うことにうなずけることと思います。
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ストレスと丹田呼吸

 新進気鋭の生理学者ハンス・セリエが、「ストレス学説」を発表したのは、1936(昭和11)年のことでした。この28歳のカナダ人が、工学用語から転用したストレスという言葉は、今では一般に広く普及しています。
 感染症がほぼ克服された現在、治療の難しい病気というと、ストレスが原因ないしは遠因となっているものが多くを占めています。
 ストレスの元祖ハンス・セリエに、「現代のストレスの救いは、東洋の感謝と知足の原理である」という言葉があります。 一方調和道丹田呼吸法を創始した藤田霊斎は、「反省と感謝」を、心を安らげ調和するために重要な実践徳目であることを唱えています。
 西洋の生理学者が、東洋古来の丹田呼吸法を説く藤田霊斎と同じような結論に到っていることは、大変興味深いことです。

人生のカーナビ

 精密な地図データと高い視点からの位置情報によって、道を正しく示してくれるカーナビによって、初めての道でも迷わなくてすむようになりました。
 人生のカーナビができたら有り難いと思いますが、当面実現は難しいかもしれません。それならば、自分の中に精密な地図データと高い視点からの位置情報を持つことを考えたいものです。
 精密な地図を持つには正しい宇宙観が必要です。正しい宇宙観の根本は、宇宙は常に私たちを祝福し大肯定をしているということと、宇宙と自分は同じいのちでつながっているという観方です。
 人生の悩みや苦しみは、大概孤立感によるものです。二元対立の宇宙観におちいると、周囲が敵に見えてきて、被害者意識にさいなまれ、益々孤独になってしまいます。

 調和道という丹田呼吸法を創始した藤田霊斎師は、丹田呼吸を通して、人はみな宇宙と調和してつながっているのだという宇宙観を伝えたかったのです。そもそも呼吸は、宇宙と私たちとの相互交流です。ですから完全な呼吸である丹田呼吸は、宇宙とのつながりを実感させてくれるものです。 
 息を吸うことは、宇宙から生命エネルギーの供給を受けることです。そして息を吐くことは、宇宙への感謝のメッセージを発信することです。宇宙の愛のエネルギーと、私たちの感謝のやり取りが丹田呼吸なのです。

 もう一つカーナビの位置情報機能は、自分を客観的に見極めることに当たります。カーナビが人工衛星の高い視点から位置情報を得るように、自分を高い視点から客観的に見るのです。とかく私たちは、他人を見るように自分を正確に見られません。どうしても身びいきして甘くなってしまいます。
 藤田霊斎師は、「反省」を、大切な徳目として挙げています。霊斎師の言う反省とは、高い視点から自分を見極めることを意味しています。丹田呼吸法は、すぐれた健康法であるばかりではなく、人生という迷路を正しく導いてくれる、高性能なカーナビの能力を養ってくれるのです。

「ゆ」の字に学ぶ

 「ゆ」という字は、見るからに柔らかく優美です。ゆめ、ゆうゆう、ゆけむり、ゆるむ、ゆかい、ゆれる、ゆるす、ゆずる・・・と、ゆたかなゆとりを感じます。

 能楽の大成者世阿弥は、「住する処なきを、まず花と知るべし」と言っています。一か所にとどまらないことが、芸を花のように美しくするのだということです。
 いかにも剛直そうな宮本武蔵でさえ、「生きるというは、いつとなく、太刀も手も出合やすく、かたまらずして、切りよきようにやすらかなるを、これ生きる手というなり(『兵法三十五箇条』)」と柔らかさを強調しています。
 また道元禅師は、宋留学のお土産は何かと聞かれて、「柔軟心」と答えました。当時中国に留学した仏教僧は、たくさんの経典をお土産に持ち帰るのが通例でした。しかし道元は手ぶらで帰って来て、師匠の如浄から教えられた柔軟心だけを持ち帰ったということです。

 このように、芸能、武道、宗教とその道は違っても、やわらかさが大事であることを述べています。人生のあらゆる面において、ゆったりとした「ゆ」の字のイメージは、人生万般に通る極意であると言うことができます。

 あらゆる道の根幹である呼吸法も、「ゆ」の字が象徴するやわらかさが大切です。丹田呼吸法の基本である波浪息は、波の動きからヒントを得た呼吸法です。波の滞ることのないなめらかな動きが、理想的な呼吸を生み出し、ひいてはゆたかな心を育むことになるのです。波浪息の実修を重ねて、背骨と仙骨をうねるように動かせるようになると、天と地が自分を通して統一し調和します。

 ゆったり、ゆっくり、ゆうぜんと、「ゆ」の字の心で波浪息を続けてみてください。そうすればあなたは、いつの間にか完全息を身につけ、丹田呼吸法の極意を会得することでしょう。

柔らかい身体

 身体が柔らかいことのメリットはたくさんあります。そのメリットを、気がつくままに少し挙げていってみましょう。

① 疲れにくい (余計な力を使わず省エネ化)。
② 骨格が狂わない (無理な動きがなくなる)。
③ 内臓の機能が調う (内臓が正しい位置に置かれる)。
④ 血行がよくなる (毛細血管が締め付けられない)。
⑤ 関節などに痛みが起こらない (神経の圧迫がなくなる)。
⑥ ストレスが無くなり、平常心でいられる (柔らかい身体はストレスを吸収する)。
⑦ ピンチに動ぜず強くなる (状況に応じた柔軟な対応が出来る)。
⑧ 過剰反応してパニックに陥らなくなる (筋肉の緊張は心の緊張につながる)。

 身体の柔らかさというと、180度近く開脚できたり、胸が大腿部にピッタリとついたりということを思い浮かべます。確かに可動範囲が広いことは大切なことですが、それ以上に、動きが柔らかいということが大切なのです。
 動きが柔らかいということは、身体の感性が豊かであるということ、つまり、センサーの性能がよいということです。
 身体のセンサーが優秀で、微妙な領域まで感じとることができると、それは心の豊かさにつながっていきます。それだけ、自分の住む世界が広くなっていくということです。同じものを見聞しても、感じとる情報が豊富になるのです。

 このような柔軟な身体を養うのも、丹田呼吸法の効能の一つです。


プロフィール

鈴木光彌

Author:鈴木光彌
1943年(昭和18)東京都葛飾区水元に生まれる
法政大学法学部卒
在学中は応援団に所属し、副団長を務める
今も、人々に生きる勇気と喜びを鼓吹する応援団を任じている
昭和55年、公益社団法人調和道協会に入会し、丹田呼吸法を学ぶ
以来研鑚を重ね、現在養根塾を主宰して活動中
著書:「丹田湧気法入門」柏樹社(共著)、「丹田を創る呼吸法」BABジャパン、「丹田を創って『腹の人』になる」小学館、「藤田霊斎 丹田呼吸法」佼成出版社

【養根塾】
◇会場: 高輪アンナ会館
東京都港区高輪2-1-13
都営浅草線 泉岳寺駅A2口徒歩5分
◇日時:毎週火 1:00~3:00PM
◇会費:1000円/1回
自由ヶ丘教室 第2・4金 10:30AM
若葉教室 毎週金 6:00PMも併設
お問合せ 090-5405-4763 鈴木
Eメール
mitsuya@wf7.so-net.ne.jp

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