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幸福の青い鳥

 チルチルとミチルの兄妹は、幸福の象徴である青い鳥を探しに、出かけて行きました。しかし、どこまで行っても青い鳥は見つかりませんでした。歩き疲れて二人が家に帰りますと、青い鳥は家の中の鳥籠の中におりました。
メーテルリンクの童話「青い鳥」は、そのような物語でした。

 豊かさ、便利さは幸福の条件の一つかもしれませんが、すべてではありません。自分の外にあるものだけを頼ると、偶然性に左右されて人生は不安定になります。
 本当の安定は、心の在り方にかかっています。自分の真実の姿を認識する力、先人、社会、親、兄弟、上司、同僚、部下、師、友人などの恩を感じる感性、困難にたち向かう勇気、生命をいとおしむ情感、などが、安定した人生の主要な条件になるものです。
 しかし、心は自分のものでありながら、思う通りにコントロールすることができません。そのためには、腹(丹田)が重要なカギになってきます。
 腹を創るためには、呼吸の仕方がポイントになります。その呼吸の仕方の要点は、呼吸に意識を込めることです。日常無意識に行なっている呼吸を、意識的に行なうのです。その意識呼吸の実践が、腹(丹田)に充実感をもたらします。つまり、意識呼吸はそのまま丹田呼吸になるのです。
 修行などと意気込んで外に求めても、得るものは多くありません。丹田という身体の中の一点に意識を置いて呼吸をすること。それだけで、身体と心は調っていくのです。
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風と息

誰が風を 見たでしょう?   ぼくもあなたも見やしない
けれど木の葉をふるわせて  風は通り抜けてゆく

                        クリスティーナ・G・ロセッティ
                        西城八十訳

 風は目に見えないけれども、木の葉のそよぐのを見て風の存在が確かめられます。
 風は宇宙の呼吸であり、我々の呼吸は体内を吹く風と言えます。また風は、神の呼吸であり、言葉を変えればいのちの息です。我々はそのいのちの息を吹き込まれて吸気となし、それを感謝でお返しすることを呼気としているわけです。
 そのことをハッキリと体感するには、日常の無意識の呼吸を、意識的な呼吸にかえてみることです。つまり丹田呼吸をすることです。すると、神あるいは宇宙の根源と自分とが、呼吸を通して統一していることが実感できます。息を吸うことは神の恵みであり、吐くことは、自分を生かし給う神への感謝のメッセージであるように感じられてきます。

 ものごとの微妙さを表現するとき、「風」という字が使われます。
  風景・風情・風光・風月・風格・風貌・風潮・風雅・風流・風味・風物・風合・風評などなど・・・
 これらの風からは、神の息づかい、宇宙の息吹が感じ取れるように思います。
 いのちの根源とのつながりを感じる感性を失うことから、不安や恐怖が起こります。そしてそのつながりを取り戻したときに、愛に満たされた心からの安心を感じます。
 そうした感性は、神の息づかい、宇宙の息吹とフラクタル構造にある丹田呼吸法によって養われるのです。

人は腹

 一徳斎山田次朗吉は、直心影流第十五世を継承した剣術家です。一橋大学などの各学校の師範を務め、『日本剣道史』の名著を残しました。最後の剣豪と言われた榊原健吉の高弟であり、清廉剛直の気骨にあふれる、典型的な武術家でありました。
 彼は若者たちに、つぎのような「修養・処世論」を残しています。

一.真に下腹に気力充実すれば、決して病気にかかるものに非ず。
二.事を成すには腹と腰とを錬成せざるべからず。
三.修養の初歩は、歩行、坐り方、臥す法の三つを心懸けるべし。
                        
   
一.は、丹田を充実させることによる健康面の効能を説いています。丹田充実すなわち腹腔内の圧力は、循環系、神経系内分泌系を調えて、身体の機能を活性化させます。
二.は、事を成し遂げるには、腹と腰を鍛錬しなければならないということです。腹と腰とは、とりもなおさず丹田に外なりません。丹田は意志力を錬り、物事をやり遂げる気力力を養成するのです。
三.は、美空ひばりの「柔(やわら)」では、行くも住(と)まるも坐わるも臥すも」と歌われていますが、様々な姿勢、動作の工夫が修養の基本であるというのです。
 調和道丹田呼吸法を創始した藤田霊斎師に、「腹で歩き腹で坐りて腹で寝よ 日々の務めも腹の力で」という道歌があります。その良い姿勢、良い動作は、腹の在り方が中心であるということです。

随所に主となる

  「随所作主 立処皆真(随所に主となれば、立処皆真なり)」と,臨済宗の開祖、臨済禅師は言いました。平たく言えば、自分の人生に責任をもって決して他人のせいにしない、ということでしょうか。いつでも主体性をもって行動すれば、周囲に振り回されずに真の人生を歩める、といった意味です。 
 自分の人生をつまらないものにするのは、何ごとも責任転嫁をして、自分を被害者に仕立てて生きることです。せっかくの与えられたかけがえのない人生を、他人の手に預けっぱなしにしているようなものです。
 
 昔から言われる「腹の人」というのは、「随所に主となる」人のことです。腹に重心を置いて、腹から動く人、そういう腹の人は真に生きる人です。
 「腹の人」になるには、いつも腹を意識することが大切です。丹田と言われるオヘソの下10センチくらいの一点に重心を置いて、そこを意識するのです。

 この丹田に意識を置いて呼吸すると、それだけで腹が充実してきます。これが丹田呼吸の基本です。是非試してください。なぜ、昔の人が腹を重視したのかがわかって来ます。
 

 
 
 




呼吸法の基本

 人は息を吐くときは、前向きの格好になるんだね。息を吸うときはそり気味になる。呼吸のことはよく知らなかったけれど、呼吸に意識を集中していたら気持ちが静まってきた。やがてしんどかった体から、かすかに念仏の声が聞こえてきたんだ。
 ・・・最初はたよりない声だったのに、だんだん腹に力が入っちゃって、響くような声になってきた。・・・もしかして自分の体の中に仏様がいるんじゃないかっていう気持ちにさえなってきた。それが、呼吸の大きな力を知った瞬間だったんだ。
(酒井雄哉著『一日一生』朝日新書)

  坂井雄哉師(大正15〈1926〉~平成25〈2013〉)は、史上三人だけという二千日回峰行を満行され、決死の「常行三昧」という荒行を達成された稀有の方です。それだけに呼吸への集中度はすごいものがあります。
 その呼吸を続けていると、だんだん丹田が充実してきて、体の中からかすかに、やがて響くような念仏の声が聞こえてきたというのです。
 体験者の言葉だけに、非常に説得力があって、丹田呼吸法を実践していくうえで、大きな励みになる言葉です。

プロフィール

鈴木光彌

Author:鈴木光彌
1943年(昭和18)東京都葛飾区水元に生まれる
法政大学法学部卒
在学中は応援団に所属し、副団長を務める
今も、人々に生きる勇気と喜びを鼓吹する応援団を任じている
昭和55年、公益社団法人調和道協会に入会し、丹田呼吸法を学ぶ
以来研鑚を重ね、現在養根塾を主宰して活動中
著書:「丹田湧気法入門」柏樹社(共著)、「丹田を創る呼吸法」BABジャパン、「丹田を創って『腹の人』になる」小学館、「藤田霊斎 丹田呼吸法」佼成出版社

【養根塾】
◇会場: 高輪アンナ会館
東京都港区高輪2-1-13
都営浅草線 泉岳寺駅A2口徒歩5分
◇日時:毎週火 1:00~3:00PM
◇会費:1000円/1回
自由ヶ丘教室 第2・4金 10:30AM
若葉教室 毎週金 6:00PMも併設
お問合せ 090-5405-4763 鈴木
Eメール
mitsuya@wf7.so-net.ne.jp

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