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頭の人、胸の人、腹の人

 明治末期から大正時代にかけて、岡田式静坐法という修養法が大きなブームになりました。主宰者である岡田虎二郎は、人を、頭の人、胸の人、腹の人の三つのタイプに分けて、頭の人は第三等、胸の人は第二等、腹の人は第一等であると言いました。
 頭の人とは、知識が豊富で頭の良い人です。そういう人は羨ましいようですが、岡田師は最下位に評価しました。せっかく与えられたこのいのちを、悔いなく活かすためには、知識を頭に詰め込むだけでは役に立ちません。
 胸の人とは、努力する人、頑張る人です。頑張ることや努力をすることは尊いことです。多くの成功者や立志伝中の人物はたいてい努力の人です。
 しかし、いつも頑張ってばかりでは疲れてしまいます。むやみな気負いは、創造性をさまたげて、紋切り型の窮屈な人間を形成してしまいます。
 うつ病や燃え尽き症候群になりやすいのも、この胸の人です。第二等の人といわれるゆえんです。
 岡田師が最も評価する第一等の人は、腹の人です。
 得意冷然 失意泰然・・・。順調な時にもはしゃがず、逆境のときにも落ち込まない人、それが腹の人です。
 頭の人は、輝きや切れ味を思わせます。音で言うと「キ」ですね。「キレル」「キッチリ」「キゼン」という感じです。その鋭さがポキッと折れそうなもろさを感じさせます。
 胸の人は尊敬に値します。しかし、「ドリョク」「ドコンジョウ」といった「ド」の音からは、どこか息をつめたような重苦しさを感じます。
 腹の人には、悠然とした幅を感じます。音で言えば「ユ」です。この場合は「ゆ」と、ひらがなで表記した方がフィーリングとして適切です。「ゆたか」「ゆとり」「ゆるす」「ゆうゆう」「ゆったり」ということで、広々とした包容力が感じられます。
 日露戦争の英雄東郷元帥の青年期は、カミソリのように切れ味鋭い人だったそうです。彼の将来を嘱望する上司は、頭が良いだけでは、参謀になれても大将にはなれないから、腹を錬るようにとアドバイスされたそうです。それを素直に聞きいれて、青年東郷平八郎は、坐禅等によって腹を錬ることを実践しました。
 連合艦隊旗艦三笠の艦橋で、「皇国の興廃」を賭ける重圧の中で、泰然自若として指揮を揮ったのは、腹の力であったと思います。
 東郷さんのような立場になることは稀にしても、腹を錬って腹の人になることは、人生の上で優先すべき大事であると思います。
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鈴木光彌

Author:鈴木光彌
1943年(昭和18)東京都葛飾区水元に生まれる
法政大学法学部卒
在学中は応援団に所属し、副団長を務めていたが、今も、人々に生きる勇気と喜びを鼓吹する応援団を任じている。、
昭和55年、公益社団法人調和道協会に入会し、丹田呼吸法を学ぶ
以来研鑚を重ね、現在養根塾を主宰して活動中
著書:「丹田湧気法入門」柏樹社(共著)、「丹田を創る呼吸法」BABジャパン、「丹田を創って『腹の人』になる」小学館、「藤田霊斎 丹田呼吸法」佼成出版社

【養根塾】
◇会場: 高輪アンナ会館
東京都港区高輪2-1-13
都営浅草線 泉岳寺駅A2口徒歩5分
◇日時:毎週火 1:00~3:00PM
◇会費:1000円/1回
自由ヶ丘教室 第2・4金 10:30AM
若葉教室 毎週金 6:00PMも併設
お問合せ 090-5405-4763 鈴木
Eメール
mitsuya@wf7.so-net.ne.jp

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