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今の心

 藤田霊斎師の創始した調和道丹田呼吸法は、調和道協会第二代目を継いだ村木弘昌博士(1912〈明治45〉~1991〈平成3〉)によって普及が続けられました。
 村木先生は、谷中の赤ひげ先生として町の医師として親しまれるかたわら、調和道の発展にも尽くされた方でした。先生が春秋社から発刊された『釈尊の呼吸法』は多くの人に読まれています。その中に「入息・出息を念じつつ行なうならば、それはおのずから丹田呼吸になっているのです。」 とあります。

 吸う息と吐く息を意識的に念じながら行なえば、それはそのまま丹田呼吸になっているということです。
 日ごろ無造作に行なっている呼吸を丁寧に念じつつ行なうと、今、与えられている「いのち」が自覚されて、生きているという実感がはっきりとしてきます。
 そうすると丹田に気力がムクムクと満ちてきます。呼吸に念を込めることが、丹田の充実として現れてくるのです。
 とかく私たちは、今に集中することをおろそかにします。今、口の中のものを味わうより、次に食べるものを物色したり、今の仕事中に、昨日の仕事の失敗を気に病んだりするものです。  
 こうした態度は、せっかく今与えられているかけがえのないいのちを、空回りさせることになります。こうした心の習慣を、入息・出息を念じつつ行なう丹田呼吸法は、修正してくれます。
 「念」という文字は今の心と書きます。今に心を集中させた丹田呼吸法は、かけがえのないこのいのちを活かしきる妙法というわけです。
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根のはたらき

 ドイツの政治家で詩人でユーモア作家のヨハン・ペーター・ヘーベル(1760~1826)に、以下の言葉があります(訳者不明)。

「我々は草木である。・・・そのことを我々が認めようと認めまいと、そんなことにかかわらず、・・・天空に花を咲かせ実を結びうるためには、根をもって土中から生い立たねばならない草木である。」
 
 努力によって功成り名遂げたヘーベルは、草木の根っこに自分を重ね合わせたのでしょう。草木が花を咲かせ実を成らせるのは、土の中深くに張り巡らせた根のはたらきです。
 人間にとって根に相当する部分は腹です。腹は肚とも書きますが、まさに肉体の土が腹です(月偏は、肉を意味する)。調和道丹田呼吸法は、土の中の根っこを鍛える呼吸法と言えます。事実実修してみると、腹の底からパワーが湧き上がってくるような感じがするものです。
 日々緑を濃くしていく草木を見るにつけ、土中の根の力強さが偲ばれます。 

絵画と丹田

  人間が一番人間たる時は、臍下丹田が整っている時である。一番活気な時である。

 歌人、随筆家としても名をなした、文化勲章受章者、中川一政画伯の言葉です。九十七歳の晩年に至るまで、絵筆をとり続けた画伯の言葉は説得力があります。
 絵画の美しい線を描くにも、丹田の力が大切な要件のようです。丹田が充実したとき、ほとばしるような活気があふれるからです。丹田に気力がこもって充実した時、人間が人間として輝く時なのです。
 20世紀を代表するフランスの画家アンリ・マチスは、10メートルの竿の先に筆をつけて、力強い線を描いたと言われています。野獣派のリーダーと称されたマチスの生命力にあふれた作品も、丹田力から生まれたと言えるようです。
 丹田力という観点から、絵画を鑑賞するのも一興です。
 
 

自然に生きる

 野の思想家といわれた宮崎童安(明治21〈1888〉~昭和38〈1963〉)は、次の言葉を残しています。
  この息は神仏そのもののいのちである。この息によって身は神仏とひとつに結びついている。

 息を数分止めれば私たちは死んでしまいます。息は習い覚えたものではなくて、生まれた時から自然にしていました。まさに神仏から頂いた,神仏そのもののいのちを生きていることになります。そして、吐く息吸う息によって神仏と交流し合い、ひとつに結びついているのです。

 童安はクリスチャンでしたが、、普遍性を重んじて「神仏」という言葉を使っています。さらに「自然」と言い換えてもいいと思います。ともすうると、自然から隔離してしまいがちな現代ですが、時折息(呼吸)に子お頃を込めて行うことで、自然とつながりたいものです。

 もう一つ、童安の詩を掲げておきます。

  《必然に従う》
  生命の必然に随って動く
  その良さを知った
  花がひらくように
  雲が動くように
  水が流れるように
  私は私の生命の
  必然に従おう


 

古関裕而さんと上虚下実

 子供のころ、プロ野球のラジオ放送を聞くのが大好きでした。NHKのスポーツ放送は今と同様「スポーツショウ行進曲」で始まりました。あの弾むようなメロディーが聞こえてくると、胸の高まりがグンと増したものでした。

 この行進曲の作曲者古関裕而をモデルにした連続ドラマが、現在NHKテレビで朝放映されています。全国高校野球大会歌「栄冠は君に輝く」、早稲田大学応援歌「紺碧の空」読売ジャイアンツ球団歌、阪神タイガース球団歌など、古関の曲はどれも心を鼓舞してくれるものばかりです。軽やかさと重厚さがマッチして、それは「上虚下実」を体現したものと私には感じられます。

 毎年東京六大学応援団連盟の主催で、「六旗の下に」という催しがあり、現在も続いています。私は法政大学応援団ブラスバンドから選抜メンバーとして加わっていました。東京オリンピックが行われた翌年の昭和40年のことでした。その時、「東京オリンピックマーチ」を、作曲者の古関裕而さんを指揮者に迎えて演奏しました。

 終始にこやかで気取らない古関さんの姿が、三連符の効いた弾むような軽快さと荘厳さを兼ね備えた「東京オリンピックマーチ」の調べと共に、目に耳に残っています。

 
 
 
 
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プロフィール

鈴木光彌

Author:鈴木光彌
1943年(昭和18)東京都葛飾区水元に生まれる
法政大学法学部卒
在学中は応援団に所属し、副団長を務めていたが、今も、人々に生きる勇気と喜びを鼓吹する応援団を任じている。、
昭和55年、公益社団法人調和道協会に入会し、丹田呼吸法を学ぶ
以来研鑚を重ね、現在養根塾を主宰して活動中
著書:「丹田湧気法入門」柏樹社(共著)、「丹田を創る呼吸法」BABジャパン、「丹田を創って『腹の人』になる」小学館、「藤田霊斎 丹田呼吸法」佼成出版社

【養根塾】
◇会場: 高輪アンナ会館
東京都港区高輪2-1-13
都営浅草線 泉岳寺駅A2口徒歩5分
◇日時:毎週火 1:00~3:00PM
◇会費:1000円/1回
自由ヶ丘教室 第2・4金 10:30AM
若葉教室 毎週金 6:00PMも併設
お問合せ 090-5405-4763 鈴木
Eメール
mitsuya@wf7.so-net.ne.jp

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