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これぞ腹の人

 1917年に、アジア人としては最初にノーベル賞を受賞したインドの思想家ラビンドラナート・タゴール(1861~1941)は、「ギタンジャリ」という詩の中で、自らの願いを述べています。

 危険から守られるのではなく、恐れなく立ち向かう勇気を
 私の悩みが鎮まることよでなく、悩みに打ち勝つ心の強さを
 救われることを渇望するのではなく、苦難を乗り越えていく力
 私はこういうことを願うのである。

 自分の今の立場を、責任転嫁しているとますます事態は悪化していきます。逆にすべて自分で引き受ける気構えを持つと、前途は一気に打開されてきます。この気構えを持つ人を「腹の人」というのです。
 
 腹を錬れ腹を鍛えよ人は腹 腹の人こそ世に尊けれ」という調和道丹田呼吸法の創始者、藤田霊斎師の道歌は、タゴールの思いとピッタリ符節が合っています。
 
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肚で考える

 世界の禅者と称された鈴木大拙博士(1870~1966)も、肚を重視し、講演で次のように語っています『禅と精神分析(東京創元社刊)。

 肚で考えるということを実際的に考えてみよう。―横隔膜をぐっと押し下げる。すると胸廓がゆったりとして機能が正しく働く。そこでからだがゆったりと落ち着いてくる。これが公案を受け入れるのにまことにピッタリした姿勢である。

 日常私たちは言葉を使って考えます。「明日はAで買い物をして、B
で食事をして・・・」と、心の中でぶつぶつ言葉を話しているものです。内言といものです。しかし、時間空間を超越した絶対の世界は、言葉では表現しきれません。
 禅で公案をねる場合がそうです。そういうことは頭で考えるのではなく、肚で考えるのだと大拙博士はここで述べています。
 「般若心経」という仏教経典がありますが、この「般若」とは、パーリー語の「パンニャー」を中国語として音訳したものです。直感的に、統合的に物事の本質をとらえる知恵です。
 肚で考えるとは、この般若の知恵を発揮することです。公案は、分析的思考の呪縛を解くために工夫されたもので、般若の知恵でなくては解けません。そのために、横隔膜をぐっと押し下げ、胸郭をゆったりとさせよ、と大拙先生は言っているのです。調和道でいう「上虚下実」です。
 本当に安心立命の境地に至るには、上虚下実の姿勢が大前提なのです。

センス・オブ・ワンダー

 『センス・オブ・ワンダー(新潮社刊)』という本があります。著者は、レイチェル・カーソン(1907~1964)という、作家にして海洋生物学者の女性です。「センス・オブ・ワンダー(The Sense of Wonder)」とは、「美しいもの、未知なもの、神秘的なものに目を見はる感性」ということです。
 「何だろう?」「なぜ?」とか、「ウヮー、きれい!」「ふしぎだ!」という、「?」や「!」が心の中にあふれているほど、人生を豊かに生きることになります。

    【幼い日】
  幼い日は 水がものいう日
  木がそだてば そだつひびきが 聞こえる日

 子供は誰もがセンス・オブ・ワンダーの持ち主であると、八木重吉(1898~1927)は上のように詠っています。この感性を再びよみがえらせるには、呼吸の仕方が大事になります。吸う息は大自然の恵みとして感謝で頂き、吐く息も丁寧に大自然に感謝を込めてお返しします。
 それはおのずと、マインドフルネスの呼吸法となり、深い瞑想となるのです。


 

あなたのし

 天照大神(あまてらすおおみかみ)が天岩戸(あまのいわと)から出てこられたので、真っ暗だった世の中がパッと明るくなりました。困り果てていた神々は、「あっぱれ、あなおもしろ、あなたのし あなさやけおけ」と喜びの声を出しました。 「みごとだ、なんて面白く、楽しく、清々しいことだ!」と、この屈託のない喜びようは感動的です。
 
 先日終わったラグビーワールド・カップの観衆を見ていると、この『古事記』の神々のような無邪気さがみられました。ラグビー自体、腕白小僧が走り回りぶつかり合っているような愉快なゲームですが、見ているほうも手を伸ばし振り上げて応援を楽しんでいました。
 「楽し」とは「手伸し」からきているそうですが、日ごろの悩みから解放されて心から楽しそうに見えました。

 ラグビーの試合終了を「ノーサイド」と言います。激しい闘いから健闘を称えあう場に一転。二元対立の世界を超えたおおらかな、「あなさやけ」の気分にひたるひとときです。

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プロフィール

鈴木光彌

Author:鈴木光彌
1943年(昭和18)東京都葛飾区水元に生まれる
法政大学法学部卒
在学中は応援団に所属し、副団長を務めていたが、今も、人々に生きる勇気と喜びを鼓吹する応援団を任じている。、
昭和55年、公益社団法人調和道協会に入会し、丹田呼吸法を学ぶ
以来研鑚を重ね、現在養根塾を主宰して活動中
著書:「丹田湧気法入門」柏樹社(共著)、「丹田を創る呼吸法」BABジャパン、「丹田を創って『腹の人』になる」小学館、「藤田霊斎 丹田呼吸法」佼成出版社

【養根塾】
◇会場: 高輪アンナ会館
東京都港区高輪2-1-13
都営浅草線 泉岳寺駅A2口徒歩5分
◇日時:毎週火 1:00~3:00PM
◇会費:1000円/1回
自由ヶ丘教室 第2・4金 10:30AM
若葉教室 毎週金 6:00PMも併設
お問合せ 090-5405-4763 鈴木
Eメール
mitsuya@wf7.so-net.ne.jp

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