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人は腹

 一徳斎山田次朗吉は、直心影流第十五世を継承した剣術家です。一橋大学などの各学校の師範を務め、『日本剣道史』の名著を残しました。最後の剣豪と言われた榊原健吉の高弟であり、清廉剛直の気骨にあふれる、典型的な武術家でありました。
 彼は若者たちに、つぎのような「修養・処世論」を残しています。

一.真に下腹に気力充実すれば、決して病気にかかるものに非ず。
二.事を成すには腹と腰とを錬成せざるべからず。
三.修養の初歩は、歩行、坐り方、臥す法の三つを心懸けるべし。
                        
   
一.は、丹田を充実させることによる健康面の効能を説いています。丹田充実すなわち腹腔内の圧力は、循環系、神経系内分泌系を調えて、身体の機能を活性化させます。
二.は、事を成し遂げるには、腹と腰を鍛錬しなければならないということです。腹と腰とは、とりもなおさず丹田に外なりません。丹田は意志力を錬り、物事をやり遂げる気力力を養成するのです。
三.は、美空ひばりの「柔(やわら)」では、行くも住(と)まるも坐わるも臥すも」と歌われていますが、様々な姿勢、動作の工夫が修養の基本であるというのです。
 調和道丹田呼吸法を創始した藤田霊斎師に、「腹で歩き腹で坐りて腹で寝よ 日々の務めも腹の力で」という道歌があります。その良い姿勢、良い動作は、腹の在り方が中心であるということです。
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随所に主となる

  「随所作主 立処皆真(随所に主となれば、立処皆真なり)」と,臨済宗の開祖、臨済禅師は言いました。平たく言えば、自分の人生に責任をもって決して他人のせいにしない、ということでしょうか。いつでも主体性をもって行動すれば、周囲に振り回されずに真の人生を歩める、といった意味です。 
 自分の人生をつまらないものにするのは、何ごとも責任転嫁をして、自分を被害者に仕立てて生きることです。せっかくの与えられたかけがえのない人生を、他人の手に預けっぱなしにしているようなものです。
 
 昔から言われる「腹の人」というのは、「随所に主となる」人のことです。腹に重心を置いて、腹から動く人、そういう腹の人は真に生きる人です。
 「腹の人」になるには、いつも腹を意識することが大切です。丹田と言われるオヘソの下10センチくらいの一点に重心を置いて、そこを意識するのです。

 この丹田に意識を置いて呼吸すると、それだけで腹が充実してきます。これが丹田呼吸の基本です。是非試してください。なぜ、昔の人が腹を重視したのかがわかって来ます。
 

 
 
 




呼吸法の基本

 人は息を吐くときは、前向きの格好になるんだね。息を吸うときはそり気味になる。呼吸のことはよく知らなかったけれど、呼吸に意識を集中していたら気持ちが静まってきた。やがてしんどかった体から、かすかに念仏の声が聞こえてきたんだ。
 ・・・最初はたよりない声だったのに、だんだん腹に力が入っちゃって、響くような声になってきた。・・・もしかして自分の体の中に仏様がいるんじゃないかっていう気持ちにさえなってきた。それが、呼吸の大きな力を知った瞬間だったんだ。
(酒井雄哉著『一日一生』朝日新書)

  坂井雄哉師(大正15〈1926〉~平成25〈2013〉)は、史上三人だけという二千日回峰行を満行され、決死の「常行三昧」という荒行を達成された稀有の方です。それだけに呼吸への集中度はすごいものがあります。
 その呼吸を続けていると、だんだん丹田が充実してきて、体の中からかすかに、やがて響くような念仏の声が聞こえてきたというのです。
 体験者の言葉だけに、非常に説得力があって、丹田呼吸法を実践していくうえで、大きな励みになる言葉です。

間接の努力

 先日NHKテレビで、引退を表明したイチロー選手の特集番組を放送していました。
 シアトルにあるイチロー選手の自宅の玄関のドアが開くと、いきなりそこはトレーニングルームでした。そこには、見たこともないトレーニングマシンが所狭しと並べてありました。彼はそこで毎日トレーニングを続けてきたということです。

 試合中のイチロー選手は、一時も気を抜かずイマのプレーに集中します。それは、時折テレビが放送する大リーグの試合の映像から目にするところです。
 こうした試合中の努力を、幸田露伴は「直接の努力」と言っています。それに対して、試合外の毎日のマシンでのトレーニングは、「間接の努力」です。
 言い換えますと、「直接の努力」とは当面の努力であり、「間接の努力」とは準備の努力です。
 二つのうち「間接の努力」が大切なのだと露伴は言います。とかく努力しても成果が上がらず無駄骨に終わるのは、「間接の努力」が足りないからだと言うのです。
 たいかに、事態がに直面しないと、私たちはつい準備の努力は後回しにしてしまうものです。

 本欄で取り上げている丹田呼吸法は、地道に人生の土台を築いていく「間接の努力」そのものの行為です。日ごろからじっくりと、心を込め、あせらず急がず続けていくことが大切です。

 努力論と言えば、フィギュアスケートの羽生結弦選手の次の言葉も、「間接の努力」を語る名言です。
 「努力はウソをつく。でも無駄にはならない」

いのちのほほえみ

 ほほえみは、好意的で肯定的な気持ちの時に、自然に顔に表れます。
 お釈迦様が弟子たちの前で、花をひねって見せたとき、迦葉(かしょう)という人だけがニッコリとほほえみました。それを見てお釈迦様は、迦葉に仏教の奥義を伝えたという話があります。
 迦葉のほほえみに、釈迦の全てを理解し全肯定した境地が表れていたのでしょう。このことは「拈華微笑(ねんげみしょう)」という禅の公案として残っています。
 
 いのちが開放され、活き活きとはたらいていることの象徴として、ほほえみが浮かびます。筑波大学名誉教授の村上和雄先生は、ほほえんでいるときには、遺伝子のスイッチはオンになっているということです。この時免疫系、内分泌系、自律神経系は本来の機能を十全に発揮されます。

 ほほえみは、上腹部(みぞおちとへその間)と密接な関連があります。上腹部が硬く張っていると、ほほえみが浮かぶことはありません。養根塾で実修する波浪息は、上腹部をゆるませるために有効な方法です。波浪息によって上腹部がゆるむと、ほほえみが自然に浮かびます。
 絶えざるほほえみは、いのちそのもののほほえみとなり、心をいつも安らかに保つのです。
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プロフィール

鈴木光彌

Author:鈴木光彌
1943年(昭和18)東京都葛飾区水元に生まれる
法政大学法学部卒
在学中は応援団に所属し、副団長を務めていたが、今も、人々に生きる勇気と喜びを鼓吹する応援団を任じている。、
昭和55年、公益社団法人調和道協会に入会し、丹田呼吸法を学ぶ
以来研鑚を重ね、現在養根塾を主宰して活動中
著書:「丹田湧気法入門」柏樹社(共著)、「丹田を創る呼吸法」BABジャパン、「丹田を創って『腹の人』になる」小学館、「藤田霊斎 丹田呼吸法」佼成出版社

【養根塾】
◇会場: 高輪アンナ会館
東京都港区高輪2-1-13
都営浅草線 泉岳寺駅A2口徒歩5分
◇日時:毎週火 1:00~3:00PM
◇会費:1000円/1回
自由ヶ丘教室 第2・4金 10:30AM
若葉教室 毎週金 6:00PMも併設
お問合せ 090-5405-4763 鈴木
Eメール
mitsuya@wf7.so-net.ne.jp

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