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人生のカーナビ

 精密な地図データと高い視点からの位置情報によって、道を正しく示してくれるカーナビによって、初めての道でも迷わなくてすむようになりました。
 人生のカーナビができたら有り難いと思いますが、当面実現は難しいかもしれません。それならば、自分の中に精密な地図データと高い視点からの位置情報を持つことを考えたいものです。
 精密な地図を持つには正しい宇宙観が必要です。正しい宇宙観の根本は、宇宙は常に私たちを祝福し大肯定をしているということと、宇宙と自分は同じいのちでつながっているという観方です。
 人生の悩みや苦しみは、大概孤立感によるものです。二元対立の宇宙観におちいると、周囲が敵に見えてきて、被害者意識にさいなまれ、益々孤独になってしまいます。

 調和道という丹田呼吸法を創始した藤田霊斎師は、丹田呼吸を通して、人はみな宇宙と調和してつながっているのだという宇宙観を伝えたかったのです。そもそも呼吸は、宇宙と私たちとの相互交流です。ですから完全な呼吸である丹田呼吸は、宇宙とのつながりを実感させてくれるものです。 
 息を吸うことは、宇宙から生命エネルギーの供給を受けることです。そして息を吐くことは、宇宙への感謝のメッセージを発信することです。宇宙の愛のエネルギーと、私たちの感謝のやり取りが丹田呼吸なのです。

 もう一つカーナビの位置情報機能は、自分を客観的に見極めることに当たります。カーナビが人工衛星の高い視点から位置情報を得るように、自分を高い視点から客観的に見るのです。とかく私たちは、他人を見るように自分を正確に見られません。どうしても身びいきして甘くなってしまいます。
 藤田霊斎師は、「反省」を、大切な徳目として挙げています。霊斎師の言う反省とは、高い視点から自分を見極めることを意味しています。丹田呼吸法は、すぐれた健康法であるばかりではなく、人生という迷路を正しく導いてくれる、高性能なカーナビの能力を養ってくれるのです。
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「ゆ」の字に学ぶ

 「ゆ」という字は、見るからに柔らかく優美です。ゆめ、ゆうゆう、ゆけむり、ゆるむ、ゆかい、ゆれる、ゆるす、ゆずる・・・と、ゆたかなゆとりを感じます。

 能楽の大成者世阿弥は、「住する処なきを、まず花と知るべし」と言っています。一か所にとどまらないことが、芸を花のように美しくするのだということです。
 いかにも剛直そうな宮本武蔵でさえ、「生きるというは、いつとなく、太刀も手も出合やすく、かたまらずして、切りよきようにやすらかなるを、これ生きる手というなり(『兵法三十五箇条』)」と柔らかさを強調しています。
 また道元禅師は、宋留学のお土産は何かと聞かれて、「柔軟心」と答えました。当時中国に留学した仏教僧は、たくさんの経典をお土産に持ち帰るのが通例でした。しかし道元は手ぶらで帰って来て、師匠の如浄から教えられた柔軟心だけを持ち帰ったということです。

 このように、芸能、武道、宗教とその道は違っても、やわらかさが大事であることを述べています。人生のあらゆる面において、ゆったりとした「ゆ」の字のイメージは、人生万般に通る極意であると言うことができます。

 あらゆる道の根幹である呼吸法も、「ゆ」の字が象徴するやわらかさが大切です。丹田呼吸法の基本である波浪息は、波の動きからヒントを得た呼吸法です。波の滞ることのないなめらかな動きが、理想的な呼吸を生み出し、ひいてはゆたかな心を育むことになるのです。波浪息の実修を重ねて、背骨と仙骨をうねるように動かせるようになると、天と地が自分を通して統一し調和します。

 ゆったり、ゆっくり、ゆうぜんと、「ゆ」の字の心で波浪息を続けてみてください。そうすればあなたは、いつの間にか完全息を身につけ、丹田呼吸法の極意を会得することでしょう。

柔らかい身体

 身体が柔らかいことのメリットはたくさんあります。そのメリットを、気がつくままに少し挙げていってみましょう。

① 疲れにくい (余計な力を使わず省エネ化)。
② 骨格が狂わない (無理な動きがなくなる)。
③ 内臓の機能が調う (内臓が正しい位置に置かれる)。
④ 血行がよくなる (毛細血管が締め付けられない)。
⑤ 関節などに痛みが起こらない (神経の圧迫がなくなる)。
⑥ ストレスが無くなり、平常心でいられる (柔らかい身体はストレスを吸収する)。
⑦ ピンチに動ぜず強くなる (状況に応じた柔軟な対応が出来る)。
⑧ 過剰反応してパニックに陥らなくなる (筋肉の緊張は心の緊張につながる)。

 身体の柔らかさというと、180度近く開脚できたり、胸が大腿部にピッタリとついたりということを思い浮かべます。確かに可動範囲が広いことは大切なことですが、それ以上に、動きが柔らかいということが大切なのです。
 動きが柔らかいということは、身体の感性が豊かであるということ、つまり、センサーの性能がよいということです。
 身体のセンサーが優秀で、微妙な領域まで感じとることができると、それは心の豊かさにつながっていきます。それだけ、自分の住む世界が広くなっていくということです。同じものを見聞しても、感じとる情報が豊富になるのです。

 このような柔軟な身体を養うのも、丹田呼吸法の効能の一つです。


統一の場としての腹

 「人生の幸運は、対立矛盾する両極を互いに一体化する道の上にしかない。 この対立矛盾を統一するのは、根源的中心を知覚するとき、そこに自分の根を下ろすとき、すなわち『肚』をもったとき成就する。」
 昭和12年から22年まで日本に滞在した、カール・デュルクハイム(1896~1988)というドイツの哲学者の言葉です。(『肚―人間の重心〈麗澤大学出版会〉』)

 昭和12年から22年間の滞日中、禅や岡田式静坐法に熱心に取り組んだデュルクハイムだけに、日本における腹「肚」の意味を深く理解し、腹を対立矛盾を一元化するものとしてとらえています。
 腹に重心をおいて身体を用いることで、身体そのものが鍛えられ、さらに心が練られ、統合力が養われます。腹を忘れた修行では、対立矛盾を統一する力は期待できません。昔から、「腹ができている」「太っ腹だ」との評価は、最高のほまれであった理由はここにあります。

 日露戦争の英雄東郷平八郎元帥は、若い頃はカミソリのように切れ味の鋭い頭脳の持ち主であったそうです。しかし頭が鋭いだけでは人間としてかたよってしまうということで、腹の人を目指して坐禅などの修行をしたとのことです。
 東郷元帥が、若いころのままの知の人だけであったら、国の興廃を賭けた日本海海戦において、泰然自若として指揮を執った、あの沈着にして重厚な人間力には達しなかったことでしょう。
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プロフィール

鈴木光彌

Author:鈴木光彌
1943年(昭和18)東京都葛飾区水元に生まれる
法政大学法学部卒
在学中は応援団に所属し、副団長を務めていたが、今も、人々に生きる勇気と喜びを鼓吹する応援団を任じている。、
昭和55年、公益社団法人調和道協会に入会し、丹田呼吸法を学ぶ
以来研鑚を重ね、現在養根塾を主宰して活動中
著書:「丹田湧気法入門」柏樹社(共著)、「丹田を創る呼吸法」BABジャパン、「丹田を創って『腹の人』になる」小学館、「藤田霊斎 丹田呼吸法」佼成出版社

【養根塾】
◇会場: 高輪アンナ会館
東京都港区高輪2-1-13
都営浅草線 泉岳寺駅A2口徒歩5分
◇日時:毎週火 1:00~3:00PM
◇会費:1000円/1回
自由ヶ丘教室 第2・4金 10:30AM
若葉教室 毎週金 6:00PMも併設
お問合せ 090-5405-4763 鈴木
Eメール
mitsuya@wf7.so-net.ne.jp

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