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立腰教育

 ところで「では、わが子に性根(しようね)を入れる極秘伝は?・・・」と問われましたらズバリ「それは唯ひとつ立腰(りつよう)の外ない」と思います。 

  上記は森信三氏(明治29〈1896〉~平成4(1992〉)の言葉です。森信三氏は、哲学者にして教育者です。90歳を過ぎまで講演・執筆活動をつづけて、多くの信奉者がおりました。
  森氏は教育の要として、しっかり腰骨を点てる「立腰教育」を終生説き続けました。同時に森先生は、「丹田常充実」ということも説かれています。腰と腹は表裏一体ですから、腰が立てば丹田は充実します。つまり根は同じことと言えます。
 実際に森先生の「立腰教育」は、幼稚園や小学校で実施され、成果を挙げています。
 これは丹田呼吸にも通じるものです。藤田霊斎師は姿勢を調えるために、次のような言葉を残しています。
 「押す、引く、張る、漏らす、巻き揚げ、気を充たせ、腰を砕くな、猫背厳禁」
 「押す」「腰を砕くな」は腰を立てることです。「張る」「巻き揚げ」は丹田を充実させることです。哲人同士、同じ結論に達したということです。
 この中の「漏らす」は、丹田呼吸法の秘伝ともいえるもので、漏らして上腹部を柔凹にすることで、安全に効果的に「丹田充実」が出来るのです。
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丹田呼吸法の系譜

 明治の末、藤田霊斎という真言宗のお坊さんが、東洋の伝統として伝わる丹田呼吸法を、「調和道丹田呼吸法」としてわかりやすく集大成しました。 この藤田霊斎に至るまでの、丹田呼吸法の系譜を簡単に述べたいと思います。

① 《釈迦》
 お釈迦様が、菩提樹の下で坐禅をして悟り開いたときの体験を伝える経典として『大安般守意経』があります。心を込めて呼吸をすることのすすめです。
②《智顗》
 釈迦の生まれ変わりと言われた、6世紀中国で活躍した天台宗の開祖智顗の言葉をまとめた『天台小止観』に、次のように書かれています。
・心を身体の下部(丹田)に沈める。
・リラックスする。
・気が全身の毛穴からスムーズに出入りしているようにイメージする。
③《白隠禅師》 江戸時代の禅の名僧です。その著『夜船閑話』には、丹田が充実したひょうたんのようなお腹をつくって、身心を健康にする方法が説かれています。
④《藤田霊斎》 ①~③を参考にして、具体的な実修法を組織しました。「胸入・腹満・漏気・充実・膨満・緊縮」という六原則から成る完全息です。これによって、曰く言い難しとされた丹田呼吸法が、誰でも実修できるようになったのです。

 これらはみな、後世に是非伝えていきたい文化遺産です。

呼吸は界面活性剤

 水と油は互いになじまずに分離してしまう性質を持っています。酢とオイルを混ぜたサラダドレッシングが分離してしまうのはその一例です。
 このドレッシングに卵の黄身を混ぜると、酢とオイルが融け合ってマヨネーズになります。 卵の黄身が界面活性剤のはたらきをするからです。

 瞑想をするとき、身体と心を統一することが必要です。「体ここに在れども心ここに在らず」では、雑念や妄想にさいなまれて瞑想になりません。しかし、雑念や妄想は取り除こうと決心しても思うようにいきません。そう思うほど雑念妄想はからみついてきます。

 身体と心を統一させるための界面活性剤は呼吸です。ひと息ひと息に心を傾けていると、身心が統一してきて瞑想が深まります。
 坐禅の実践に当たって、「調身・調息・調心」ということを教えられます。調身と調心の間に調息があるところに、呼吸のはたらきが表わされています。呼吸には、身体と心を結ぶ界面活性剤としてのはたらきがあるからです。
 
 釈尊も、坐禅のために呼吸が大切であることを説いています。それは「大安般守意経」という経典にまとめられています。
 坐禅や瞑想に限らず呼吸を調えることは、あらゆる面でのパフォーマンスを向上させる力を持っています。呼吸には、身体と心の間を取り持つだけでなく、自分と環境を融合させる、界面活性剤としてのはたらきがあるからです。
 

浩然の気を養う

 6月1日から3日間、北海道洞爺湖に行ってきました。
 まだ新緑の森には、ウグイス、カッコウ、ハルゼミなどが鳴きかわしていました。そんな環境から紺碧の洞爺湖を見下ろすと、孟子の言う「浩然の気を養う」とはこのことかと思いました。
 それは 『孟子(公孫丑上篇)』にあります。

 我れ善くわが浩然(こうぜん)の気を養う。あえて問う。何をか浩然の気と謂(い)う。曰く、言い難き。其(そ)の気たるや、至大至剛(しだいしごう)。直をもって養いて害するなければ、則ち天地の間に塞(ふさ)がる。     

 弟子の公孫丑に、「修行のために何をしたらよいのでしょうか?」と問われた孟子は、「私は浩然の気を養う」と答えました。
 すると公孫丑は、「では浩然の気とは何ですか?」と問うと、「それは言葉では言い難い。限りなく広大で限りなく強靭なものである。正直な心を養って執着することが無ければ、天地いっぱいに広がるものだ。」と答えました。
  『孟子』は、中国の儒学者孟子(紀元前372?~紀元前289)の言葉をまとめた書物です。儒教を「孔孟の教え」と言うように、孔子に次ぐ儒教の重要な人物が孟子です。孔子が聖人と言われ、孟子は亜聖(あせい)と呼ばれています。

 ところで、わざわざ郊外に出かけなくても浩然の気を養う方法があります。それは丹田呼吸法を一心に実修することです。常に生命エネルギーを供給して下さる宇宙に向かって感謝の呼気をするならば、だれでも天地の間に塞がる「浩然の気」を実感することが出来るのです。
 
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プロフィール

鈴木光彌

Author:鈴木光彌
1943年(昭和18)東京都葛飾区水元に生まれる
法政大学法学部卒
在学中は応援団に所属し、副団長を務めていたが、今も、人々に生きる勇気と喜びを鼓吹する応援団を任じている。、
昭和55年、公益社団法人調和道協会に入会し、丹田呼吸法を学ぶ
以来研鑚を重ね、現在養根塾を主宰して活動中
著書:「丹田湧気法入門」柏樹社(共著)、「丹田を創る呼吸法」BABジャパン、「丹田を創って『腹の人』になる」小学館、「藤田霊斎 丹田呼吸法」佼成出版社

【養根塾】
◇会場: 高輪アンナ会館
東京都港区高輪2-1-13
都営浅草線 泉岳寺駅A2口徒歩5分
◇日時:毎週火 1:00~3:00PM
◇会費:1000円/1回
自由ヶ丘教室 第2・4金 10:30AM
若葉教室 毎週金 6:00PMも併設
お問合せ 090-5405-4763 鈴木
Eメール
mitsuya@wf7.so-net.ne.jp

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