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腹圧の効能

 丹田呼吸を一口に言うと、腹圧を維持しながら息を吐くという呼吸です。
 丹田呼吸は、「呼主吸従」といって、吐く方に重きを置きます。これは、吸うより吐く方が重要だというのではなく、吐くことに意識を向けることです。意識をこめて丁寧に息を吐くと、吸う息は自然に吐く息と同等の室の良い吸気が行われます。
 このような丹田呼吸を行っていると、身心ともに充実して、身体面では血行が良くなり、新陳代謝が盛んになります。精神面では、気持が前向きになって、考え方が肯定的になります。

 呼気の際腹圧がかかるとき、横隔膜、腹横筋、骨盤底筋群の三つの筋肉がはたらいています。横隔膜はドーム球場の屋根のような形をした膜状の筋肉で、腹腔の上部を形成しています。横隔膜は緊縮すると、下方に下がってきます。下がって腹腔の容積が狭くなった分、腹腔内に圧力が生じるのです。
 骨盤底筋群は、腹腔の底部を構成していて、緊縮した時に横隔膜に対応して上方に上がることで腹圧を生じさせます。下降する横隔膜と、上昇する骨盤底筋群によって、上下挟み撃ちで腹圧を作りだします。第二の横隔膜とも呼ばれています。
 腹横筋は、コルセットのように下腹部を引き締めることで、腹圧を構成します。
 この三つの筋肉に、後方の壁となって圧力の逃がさないようにしているのが仙骨です。骨盤の後ろ側にある骨です。横隔膜、骨盤底筋、腹横筋、それに仙骨を加えた四者が、腹圧を作り出す四天王です。
 この四天王が、絶妙のコンビネーション働くと、完全な丹田呼吸が身についてきます。それは、身心の健康を創り出すだけでなく、諸芸・諸道に通じる大原則なのです。
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良い血をつくり、よくまわす

調和道丹田呼吸法を創始した藤田霊斎師に、次の道歌があります。

純良な血をよくつくりよくまわし コリを除くが健康の元

 健康の根元は、良い血つくることと、その良い血を循環させることであるというのです。
「ち」という音は、「いのち」「ちから」「だいち」「ちち(父・乳)」など、いずれも生命に関連した言葉です。なかでも、「血」は、いのちなりということです。

 良い血とは、十分に炭酸ガスが排出され、酸素を取り込んだ血液です。浅く弱い呼吸では、良い血にはなりません。正しい呼吸、つまり丹田呼吸によって、良い血がつくられるのです。
 次に、良い血をよくまわす」ということです。そもそも良い血は、鮮紅色でサラサラとしてよくまわるものです。酸素の少ない血液は、粘り気があってまわりにくくなっています。
 「三寸流れて水清し」と言います。流れる水は濁らずにきれいです。血も同じで、良い血をつくり、よく循環させることで、病の元であるコリができません。そのために、丹田呼吸は大きな役割を果たすのです。



祝詞に見る丹田呼吸法

 祝詞(のりと)中でも『大祓(おおはらえ)の詞(ことば)』は最も有名です。その中に次の詞があります。

 息吹戸(いぶきど)に坐(ま)す息吹戸主という神、根の国・底の国に息吹放ちてむ。斯(か)く息吹放ちてば、根の国・底の国に坐す速流離姫(はやさすらひめ)という神、持ち流離(さすら)い失いてむ。
              
 「大祓の詞」とは、我々の罪や穢(けが)れを祓い清めるための祝詞(のりと)です。多くの神社で六月と十二月に行われる大祓の神事で唱えられる有名な祝詞です。冒頭の文はその一部で、その意味は次の通りです。

 息を吹く所にいらっしゃる息吹戸主という神様が、地下にある死後の世界を、息を吹いて吹き飛ばすでしょう。こうして息で吹き飛ばせば、その地下の国にいらっしゃる速さすら姫という神様がさすらって出てきて、その罪穢れがなくなってしまいます。

 息吹戸主という神様は、その息吹によって、罪や穢れを吹き払う力を持っています。まさに呼吸の神様と言えます。
 ここで興味深いことは、呼吸が罪や穢れを祓い清める力を持ったものとして、昔の人が考えていたことです。その古人の直感は、呼吸に心を込めた調和道丹田呼吸法を実修して見ると実感できます。実修が終ったあとのあの清々しさは、諸々のけがれが吹き飛ばされた感じがします。

沖ヨガと丹田

 日本ではあまりなじみのなかった、ヨガ(ヨーガ)という言葉を広めたのは、昭和35年に発刊された沖正弘著『人間を改造するヨガ・行法と哲学』という本でした。
 禅や武道や陰陽哲学などと融合させ、現代的に解釈した、いわゆる沖ヨガは、沖師が逝去後30年以上経った今でも、多くの信奉者を有し、多くの著書が復刻されています。
 沖師の著書には、東洋の道に通じる丹田の重要さが説得力をもって説かれています。その中に次の言葉があります。

 「丹田に力のはいっていない状況では、上半身に力がはいるために、交感神経ばかりが興奮して、アドレナリンが全身をかけめぐり、このために血液の酸性度が増加します。この現象は人類病といってよいほどに現代の人々のほとんどが見舞われています。」

 上半身に力が入っていることはストレスの表れです。それによって自律神経やホルモン系のバランスを乱し、血液を酸性に傾けてしまいます。この弊害を防ぐには、 上体を支える丹田えをしっかり安定させることが必要であると言うのです。
 現代病のほとんどが、この上半身の過緊張からくること、そしてそれは、丹田の力が抜けているからだと、沖正弘師は、明確に説いています。
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プロフィール

鈴木光彌

Author:鈴木光彌
1943年(昭和18)東京都葛飾区水元に生まれる
法政大学法学部卒
在学中は応援団に所属し、副団長を務めていたが、今も、人々に生きる勇気と喜びを鼓吹する応援団を任じている。、
昭和55年、公益社団法人調和道協会に入会し、丹田呼吸法を学ぶ
以来研鑚を重ね、現在養根塾を主宰して活動中
著書:「丹田湧気法入門」柏樹社(共著)、「丹田を創る呼吸法」BABジャパン、「丹田を創って『腹の人』になる」小学館、「藤田霊斎 丹田呼吸法」佼成出版社

【養根塾】
◇会場: 高輪アンナ会館
東京都港区高輪2-1-13
都営浅草線 泉岳寺駅A2口徒歩5分
◇日時:毎週火 1:00~3:00PM
◇会費:1000円/1回
自由ヶ丘教室 第2・4金 10:30AM
若葉教室 毎週金 6:00PMも併設
お問合せ 090-5405-4763 鈴木
Eメール
mitsuya@wf7.so-net.ne.jp

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