養根塾

　宇宙は、私たちの生命のふるさとです。調和道の創始者である藤田霊斉先生は、これを「宇宙本元のいのち」と言っています。「宇宙本元のいのち」は、完全な秩序をもって活動する存在です。
　宇宙との関係をうまく保っていくことが、人生を楽しく生きる最良の方策です。そしてそのためには、コミュニケーションが大切であることは、人間同志の関係と同じです。ただ違うのは、宇宙とのコミュニケーションがうまくいかないとしたら、全ては私たち人間の側に問題があるということです。宇宙は完全な秩序ですから、間違いはあり得ません。
　私たちと宇宙とのコミュニケーションは、呼吸を通して絶え間なく行なわれています。宇宙との正しいコミュニケーションとは、正しい呼吸をすることなのです。そのような呼吸を丹田呼吸と言います。丹田を充実させて一息一息に心を込めていますと、宇宙本元のいのちと自分がひとつながりであることに気付いてきます。
　この気付きは、私たちの中に、力強いエネルギーをもたらします。宇宙本元のいのちとつながったのですから当然です。これまでは、乾電池で自己完結的に動いていたものが、大発電所の電源から無限のエネルギーを供給されるようになったようなものです。乾電池では、いつパワーが切れてしまうか気がかりで思い切った活動ができません。しかし、無限のエネルギーにつながっていれば、心置きなく縦横無尽に活躍することができることになるわけです。
　吸う息は、宇宙の本元からいただく生命です。宇宙本元から自分の生命がやって来たことを思い、感謝して頂きましょう。そして吐く息は、感謝をささげる営みです。生かして頂いていることの有り難さを肝に銘じ、うやうやしく感謝をささげましょう。
　ここに宇宙とのコミュニケーションが生まれ、大安心の境地が生まれるのです。

　江戸時代の公式学問の朱子学に対して、陽明学は、公的な保護下にないだけにかえって、生命力に富む学問体系でした。陽明学は、中国の明の時代に、王陽明によって樹立されたものです。
　王陽明は、その弟子の編纂した『伝習録』の中で、次のように語っています。
「志を立て功を用いるは、樹を種えるがごとく然り。その根芽に方りては、なお未だ幹あらず。枝ありて後葉あり、葉ありて後花実あり。初め根を種える時は、只管栽培灌漑して、枝想を作すこと勿れ、葉想を作すこと勿れ、花想を作すこと勿れ、実想を作すこと勿れ。懸想するも何の益かあらん。ただ栽培の功を忘れずんば、枝葉花実ある没きを怕れんやと。」
　大きな目的を目指す時は、樹木を植えるようにすることである。初めは根を植えるときに、枝や葉が繁るだろうか、花が咲くだろうか、実がなるだろうかと、心配しても何の利益にもならない。今、この根がキッチリと根付くことを思って、先のことをあれこれ悩まないことが大切である。・・・といった意味です。
　王陽明は軍人でもあったので、その説くところは、理想論に片寄らず現実を重視したものになっています。日常の仕事を通して学んでいくという「事上錬磨」という彼の言葉にも、そのことが表れています。

　根を大切にすること自体、現実重視の考えが表れています。花が咲き実が成る樹木を育てるには、まず根を養うにことです。
丹田呼吸法の実修は、根を養うことです。血流を促進し、自律神経を活性化し、内分泌系を調え、免疫系を盛んにし、中枢神経を冴えわたらせ、筋肉をバランスよく働かせるには、根である丹田を錬ることが何よりも先決です。

幹を育て、花を咲かせ、実を成らせ、葉を繁らすには、根をシッカリと養うことです。
私たちの根は丹田です。
根である丹田を確実に養うためには、丹田呼吸が一番です。
正しい丹田呼吸法を身に付けて、根を養いましょう。

　「頭燃を払う」という言葉があります。髪の毛に火が着いたら、すぐに必死で消すと思います。大事な事は、後回しにしないで、すぐに取り掛かれということです。　
呼吸は誰でも一日中欠かさず行っています。それを呼吸法と称して、行うのはばかげているようにも思われます。しかし呼吸法で正しい呼吸を身に付ける事は、後々になって身心の健康に大きな違いが出てきます。呼吸法の中でも、丹田呼吸法は、さらに大きな効果をもたらします。
その効果は、超虚弱な私の37年間にわたる体験から実証済みです。また、たくさんの方々にお伝えしてきた経験からも、身を以てその素晴らしさを感じています。今身心の不調をかかえる方はもちろん、健康な方にも是非実修して頂きたいと考え、養根塾という道場を開設しています。是非お越しください。