微笑の徳

 松居桃樓(まついとうる)著、『禅の源流をたずねて(柏樹社)』は、『天台小止観』を意訳した本です。悟りとは交感神経と副交感神経のバランスがとれていて、ニコニコと微笑んだ状態になることであると書いてあります。そして、修行の目的は、「微笑めなくなる種をまかないこと」、そして、「微笑みの芽を育てること」であるというのです。
 微笑みは、一切肯定、受容、好意、赦し、そして愛の端的な表れです。釈尊が一枝の花を大勢の弟子たちに示した時、ただ一人ニッコリと微笑んだ迦葉にその法を伝えたと言われています。迦葉の微笑みは、釈尊の全てを理解していることを如実に表していたのです。
 このように、ニコニコと微笑んでいるときに不安はありません。こういう状態のとき人は幸福を感じます。反対に、心を動揺させる感情とは、怒り、敵意、恐怖、不安、後悔、焦燥、怨恨、嫉妬、悲嘆、絶望といったものです。このような感情が心を支配しているとき、とてもニコニコなどしていられません。擬態語で表せば、カッカ、ムカムカ、ビクビク、クヨクヨ、イライラ、キリキリ、ジリジリ、メソメソ、ションボリという状態に心を占領されていることが不快な心であり、それは微笑みに象徴される平安な心の対極にあるものです。
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胸中洒落の人

 江戸時代の儒学者、山崎闇斎(1619〈元和元〉年~1682〈天和2〉年)に、「有感」という漢詩があります。仮名混じりの読み下しにして掲げてみます。

  「有 感」
 坐(そぞ)ろに憶(おも)う天公世塵(てんこうせじん)を洗うかと
 雨過ぎて四望(しぼう)更に清新
 光風霽月(こうふうせいげつ)今猶(なお)在(あ)り
 唯(ただ)欠く胸中洒落(きようちゆうしやらく)の人


 「気持のよい夕立だ。天が世の中の塵を洗い流してくれたように思える。その雨が降りやんで、どこを見ても清々しい眺めだ。光風霽月のような高潔な人は今でもいるけれども、この雨上がりのような、胸にわだかまりを持たない、スッキリと力の抜けた胸中洒落の人はなかなかいないものだ」
 このように山崎闇斎は述懐しています。中国の黄庭堅(1045~1105)、またの名を黄山谷とも呼ばれる宋代の詩人も、「胸懐(きようかい)洒落なること光風霽月の如し」と言っています。闇斎はこの詩から引用したのかも知れません。
 洒落とは、「物事に頓着せず、さっぱりとしてわだかまりのないこと」と、広辞苑には書いてあります。
 「胸中洒落の人」は、養根塾が目指す上虚下実の人に通じる人間像です。

ポジティブ・シンキング

 以前、読売新聞の「編集手帳」欄に、次のような小学校3年生の男の子の詩が紹介されていました。

  《交かん》
  人間ってね 
  イヤなことが 
  いっぱいたまると
  幸運と交かんできるんだよ


 毎日の生活で出会うイヤなことは、幸運と交換できる金貨のようなものなのだ、と、この少年はいうのです。イヤなことから逃げずに、むしろ歓迎するという究極のポジティブ・シンキングです。
  「絶望は愚者の結論である」と、英国ヴィクトリア朝時代の首相であったベンジャミン・ディズレーリ(1804~1881)は言っています。問題には必ず解決が用意されていることを信じて、何があっても絶望的にならず、いつも楽観的に希望を持って生きていきたいものです。何があっても絶望することを知らない人には、悪運のほうが根気負けして逃げていきます。
 私たちは自分を守ろうとして、重い鎧を着こんで生きているところがあります。悲観というものも、自分を守ろうとして着こむ鎧なのです。その鎧の重さが、絶望感として感じられるのです。修行は力んで行うものではありません。自我防衛の鎧を脱いで、肩の力を抜き、楽観的に生きるのが修行です。
 養根塾では、「波浪息」という呼吸法を行います。「波浪息」は、自我防衛の鎧を脱ぐための最良の方法です。

※7月10日(火)の養根塾はお休みです。

立腰教育

 ところで「では、わが子に性根(しようね)を入れる極秘伝は?・・・」と問われましたらズバリ「それは唯ひとつ立腰(りつよう)の外ない」と思います。 

  上記は森信三氏(明治29〈1896〉~平成4(1992〉)の言葉です。森信三氏は、哲学者にして教育者です。90歳を過ぎまで講演・執筆活動をつづけて、多くの信奉者がおりました。
  森氏は教育の要として、しっかり腰骨を点てる「立腰教育」を終生説き続けました。同時に森先生は、「丹田常充実」ということも説かれています。腰と腹は表裏一体ですから、腰が立てば丹田は充実します。つまり根は同じことと言えます。
 実際に森先生の「立腰教育」は、幼稚園や小学校で実施され、成果を挙げています。
 これは丹田呼吸にも通じるものです。藤田霊斎師は姿勢を調えるために、次のような言葉を残しています。
 「押す、引く、張る、漏らす、巻き揚げ、気を充たせ、腰を砕くな、猫背厳禁」
 「押す」「腰を砕くな」は腰を立てることです。「張る」「巻き揚げ」は丹田を充実させることです。哲人同士、同じ結論に達したということです。
 この中の「漏らす」は、丹田呼吸法の秘伝ともいえるもので、漏らして上腹部を柔凹にすることで、安全に効果的に「丹田充実」が出来るのです。

丹田呼吸法の系譜

 明治の末、藤田霊斎という真言宗のお坊さんが、東洋の伝統として伝わる丹田呼吸法を、「調和道丹田呼吸法」としてわかりやすく集大成しました。 この藤田霊斎に至るまでの、丹田呼吸法の系譜を簡単に述べたいと思います。

① 《釈迦》
 お釈迦様が、菩提樹の下で坐禅をして悟り開いたときの体験を伝える経典として『大安般守意経』があります。心を込めて呼吸をすることのすすめです。
②《智顗》
 釈迦の生まれ変わりと言われた、6世紀中国で活躍した天台宗の開祖智顗の言葉をまとめた『天台小止観』に、次のように書かれています。
・心を身体の下部(丹田)に沈める。
・リラックスする。
・気が全身の毛穴からスムーズに出入りしているようにイメージする。
③《白隠禅師》 江戸時代の禅の名僧です。その著『夜船閑話』には、丹田が充実したひょうたんのようなお腹をつくって、身心を健康にする方法が説かれています。
④《藤田霊斎》 ①~③を参考にして、具体的な実修法を組織しました。「胸入・腹満・漏気・充実・膨満・緊縮」という六原則から成る完全息です。これによって、曰く言い難しとされた丹田呼吸法が、誰でも実修できるようになったのです。

 これらはみな、後世に是非伝えていきたい文化遺産です。
プロフィール

鈴木光彌

Author:鈴木光彌
1943年(昭和18)東京都葛飾区水元に生まれる
法政大学法学部卒
在学中は応援団に所属し、副団長を務める
今も、人々に生きる勇気と喜びを鼓吹する応援団を任じている
昭和55年、公益社団法人調和道協会に入会し、丹田呼吸法を学ぶ
以来研鑚を重ね、現在養根塾を主宰して活動中
著書:「丹田湧気法入門」柏樹社(共著)、「丹田を創る呼吸法」BABジャパン、「丹田を創って『腹の人』になる」小学館、「藤田霊斎 丹田呼吸法」佼成出版社

【養根塾】
◇会場: 高輪アンナ会館
東京都港区高輪2-1-13
都営浅草線 泉岳寺駅A2口徒歩5分
◇日時:毎週火 1:00~3:00PM
◇会費:1000円/1回
自由ヶ丘教室 第2・4金 10:30AM
若葉教室 毎週金 6:00PMも併設
お問合せ 090-5405-4763 鈴木
Eメール
mitsuya@wf7.so-net.ne.jp

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