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古関裕而さんと上虚下実

 子供のころ、プロ野球のラジオ放送を聞くのが大好きでした。NHKのスポーツ放送は今と同様「スポーツショウ行進曲」で始まりました。あの弾むようなメロディーが聞こえてくると、胸の高まりがグンと増したものでした。

 この行進曲の作曲者古関裕而をモデルにした連続ドラマが、現在NHKテレビで朝放映されています。全国高校野球大会歌「栄冠は君に輝く」、早稲田大学応援歌「紺碧の空」読売ジャイアンツ球団歌、阪神タイガース球団歌など、古関の曲はどれも心を鼓舞してくれるものばかりです。軽やかさと重厚さがマッチして、それは「上虚下実」を体現したものと私には感じられます。

 毎年東京六大学応援団連盟の主催で、「六旗の下に」という催しがあり、現在も続いています。私は法政大学応援団ブラスバンドから選抜メンバーとして加わっていました。東京オリンピックが行われた翌年の昭和40年のことでした。その時、「東京オリンピックマーチ」を、作曲者の古関裕而さんを指揮者に迎えて演奏しました。

 終始にこやかで気取らない古関さんの姿が、三連符の効いた弾むような軽快さと荘厳さを兼ね備えた「東京オリンピックマーチ」の調べと共に、目に耳に残っています。

 
 
 
 
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上虚下実のすすめ

 紀元前4世紀頃活躍した荘子(そうし)は、「大道廃れて仁義あり」といったような、パンチのきいた逆説的発言が魅力の中国の哲人です。その荘子に、次の言葉があります。

 真人の息(いき)は是を息(そく)するに踵(くびす)を以てし、衆人の息は是を息するに喉(のど)を以てす。
 
 真人、つまり真理を悟った人はかかとで呼吸をし、一般の人はのどで呼吸をするというのです。息は、肺からのどを通って出たり入ったりしています。
 いくら深い真理に達した人でも、かかとで息をするわけはありませんが、肺から最も遠い位置にあるかかとまで貫く通すような、強く長い息が真人の息だということなのでしょう。さらに言えば、のどという上部を意識するのではなく、足の裏という下部を意識することが、上等な呼吸であるということです。つまり上虚下実が大切なのだということです。
 江戸時代の禅の名僧、白隠禅師も『夜船閑話』の中で次のように述べています。

 「おおよそ生を養うの道、上部は常に清涼ならんことを要し、下部は常に温暖ならんことを要せよ」

 二人の達人が符節を合わせて、「上虚下実」の重要性を説いています。

肥田春充の養根の教え

 斉藤孝明治大学教授は、日本の武道、芸道等の伝統文化は腰と腹に基づいていると述べています。
 武道や芸道に限らず、日常生活のすべてにおいて、腰と腹に重心を置くのが日本の文化であると言えます。この欄でたびたび取り上げる、調和道丹田呼吸法の創始者、藤田霊斎は、斎藤教授の言う腰・腹文化の代表的人物です。
 今回は、藤田霊斎とほぼ同時代に、腰・腹文化を唱道した肥田春充(1883〈明治16〉~1956〈昭和31〉)を取り上げることにいたします。
 この肥田春充(ひだはるみち)に、「上体は清明空虚 腰腹は充実強固」との言葉があります(『実験簡易強健術』明治44年)。
 「上体は清明空虚」とは、肩や胸、背は、清く明るいイメージに保って、胸郭は、つかえのないカラリとした状態であれ、ということです。藤田霊斎の言う「上虚」です。
 そして「腰腹は充実強固」ということで、これは「下実」ですね。丹田は、腰と腹の両面から考えなくてはならないのです。
 腰と腹がしっかりしていることは、そのまま精神面の強さにも通じるのです。まさに養根の修養ということです。

今こそ肚を練る時

 気息(いきあい)を臍下に充実(みた)しむれば、よく百病を除 くということ、 実 (まこと)にその 験(しるし) あり。 
                                                              平野元良『養生訣』

 平野元良(1790〈寛政2〉~1867〈慶応3〉)は、江戸時代末期に名医と謳われた人です。
 彼の著した『養生訣(ようじょうけつ)』は、丹田呼吸法や健康法などについて書かれた、当時のベス トセラーです。
 平野元良の丹田呼吸法は、 東嶺、 寺田宗有、白井亨を通した白隠禅師 直系に当たります。 また医師でありながら剣術にお いても、かなりの名人であったよ うです。 元良の直接の師白井亨は、丹田呼吸法 の習練により、 独自の剣の道に達した人です。
 冒頭の文は、 丹田呼吸法の効能を、 平野元良 が述べたものです。 みぞおち部分を緩め丹田を充実させる(腹圧をかける)呼吸んすなわち丹田呼吸は、 「気息を臍下に充実」さ せることに外なりません。 それによって、 様々 な病気が治ることが、自分の体験からも断言で きると言っているのです。
 
 新型コロナ・ウイルス騒動で、とかく鬱屈しがちな昨今ですが、こんな時こそ、平野元良の「気息を臍下丹田に充たす丹田呼吸で、「肚」を練ることが必要です。

息のはたらき

 調和道丹田呼吸法の創始者である藤田霊斎師は、「息は、古きを吐き、新しきを吸い、以て臓を練り、意をもっぱらにし、精を積んで、神に通ず」という東洋の古典の言葉(出典不明)を挙げています。
 古き(炭酸ガス)を吐き、新しき(酸素)を吸うのが呼吸とすると、息はそれだけではなく、内臓の鍛錬、心の集中、生命エネルギーの蓄積、さらには神と一体になるためのはたらきをしているというのです。
 このように息というものは、非常に深い意味があるものなのです。 

 ところで、ラテン語の“spiritus(スピリタス)”、ヘブライ語の“ruah((ルアッハ)”、ギリシャ語の“pneuma(プネウマ)”という言葉は、風、息、霊と、3つの意味を表しているそうです(『風についての省察』松山康國著・春風社刊)。
 これらの古典言語が、宇宙の息吹である風と、いのちの本質である霊、それと息が、同じ言葉の中に含まれていることにも、非常に興味がひかれます。
 
 呼吸という無意識の行為を、もう一度再認識して質の高い息にまで高める工夫することが大切のようです。その質の高い息を体得する方法こそ、丹田呼吸法であるのです。  
                                          
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プロフィール

鈴木光彌

Author:鈴木光彌
1943年(昭和18)東京都葛飾区水元に生まれる
法政大学法学部卒
在学中は応援団に所属し、副団長を務めていたが、今も、人々に生きる勇気と喜びを鼓吹する応援団を任じている。、
昭和55年、公益社団法人調和道協会に入会し、丹田呼吸法を学ぶ
以来研鑚を重ね、現在養根塾を主宰して活動中
著書:「丹田湧気法入門」柏樹社(共著)、「丹田を創る呼吸法」BABジャパン、「丹田を創って『腹の人』になる」小学館、「藤田霊斎 丹田呼吸法」佼成出版社

【養根塾】
◇会場: 高輪アンナ会館
東京都港区高輪2-1-13
都営浅草線 泉岳寺駅A2口徒歩5分
◇日時:毎週火 1:00~3:00PM
◇会費:1000円/1回
自由ヶ丘教室 第2・4金 10:30AM
若葉教室 毎週金 6:00PMも併設
お問合せ 090-5405-4763 鈴木
Eメール
mitsuya@wf7.so-net.ne.jp

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