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エネルギーとしての自分

 サザン・オールスターズの桑田佳祐は歌います。

  この世の中を形作るのは
  精神なのか物質なのか
  アインシュタインに聞いてみな
  E=MC²(エナジーイコールエムシースクウェア) 


 自分の身体は、皮膚に包まれた固体と見るかエネルギーと見るかで、身体感が大きく違ってきます。
 身体を固体と見ると、機械的で固く制限されたものとして感じられ、宇宙観まで狭くしてしまいます。一方エネルギーと見ると、柔軟で自在で温かなものに感じられ、宇宙観は無限の完全なすがたととらえられるようになります。
 同じエネルギーも生命エネルギーとして見ると、躍動的で自在な存在と感じられ、さらに愛のエネルギーとして見ると、柔らかい温かな存在として感じられてきます。

 調和道丹田呼吸法の創始者である藤田霊斎師は、丹田呼吸によって「健康・剛勇・叡智・至誠」という人間の四つの徳性が顕現されるといっています。丹田呼吸の実践は、エネルギーとしての身体感覚を磨いてくれるからです。
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お謡と丹田呼吸

 観世流能楽の中興の祖といわれた、第9世観世黒雪(1566~1626)は、観世流謡曲の極意を和歌の形で残しています。

わが宿は菊を籬(まがき)に露敷きて 
月にうたふる瓢箪(ひょうたん)の声


 黒雪7は幼少から徳川家康につかえ、秀忠にも能を指導した人物です。
 観世流のお家芸(わが宿)は、菊の垣根のように美しくて強く、露のようなうるおいをもたせ、ひょうたんのように腹をふくらませ、八分目に謡え、ということを教えているのです。
 また、観世流で使用する見台(謡本を置く台)には、左側には二分欠けの月が、右側にはひょうたんが透かし彫りにしてあって、黒雪の和歌の下の句が反映されています。
 見台にまで、謡うときの呼吸の仕方が表わされているところが、大変興味深くいですね。
 ひょうたんのような、すなわち、上虚下実の腹で、いきまないように漏気(八分の月)に心して謡え、ということです。見台が丹田呼吸法を教えているのです。
 ひさご腹の重要さを説く点で白隠禅師とまったく同じですが、黒雪の方が白隠(1685~1768)より年代的に先輩ですから、黒雪オリジナルの見解ということができます。
 このことから丹田呼吸法が、広い分野で活用されていることがわかります

生かされている

 この息は神仏そのもののいのちである。この息によって身は神仏とひとつに結びついている。 宮崎童安(明治21〈1888〉~昭和38〈1963〉)

 野の思想家と言われた詩人と呼ばれた宮崎童安の言葉です。
 息を数分止めれば、私たちは死んでしまうわけで、息はいのちそのものです。
 息をすることは、自分で考えだしたことではないし、習い覚えたものでもありません。生まれた時から自然に息をしていました。それから見ても、まさに神仏から頂いた,神仏そのもののいのちを生きていることになります。
 そして、吐く息吸う息によって神仏と交流し合い、ひとつに結びついているのです。
 もう一つ童安の詩を見て、生かされている身であることを自覚したいと思います。

 《必然に従う》
生命の必然に随って動く
その良さを知った
花がひらくように
雲が動くように
水が流れるように
私は私の生命の
必然に従おう

呼吸の質

息を行(や)るのは、息を「空(くう)」に向かわしめるためである。
         『大安般守意経(だいあんぱんしゆいきよう)』より 


 『大安般守意経(アナパーナサチ)』は、呼吸に意識を用いること、すなわち呼吸法を説いた仏教経典です。
 息も呼吸も、英語で言えばbreathingですが、少しニュアンスが違います。『天台小止観』という本には、呼吸には、「風(ふう)・喘(せん)・気・息」の四つの形があって、「風」が最も悪い呼吸で、「息」が最も良い呼吸であると言っています。
 「風」は、空気が鼻を出入りするとき、音がして粗っぽい呼吸のことです。喘、気と、少しずつ良くなっていって、「息」は最も良質な呼吸で、音もなく結滞もなく、きめ細かく滑らかな呼吸だと言うのです。
 「行(や)る」というのは、修行するということです。まず、風から喘、気と、呼吸の質を上げていって、息にまで高める修行をするということです。そしてさらに息を、「空」に向かわせるということが、呼吸法修行の目的だということです。
 私たちのいのちというものは、自分の内部だけで閉じていては維持することが出来ません。すなわち、いのちは開放系であり、空(宇宙)にまでつながることで、生き生きとはたらくのです。
 

自己位置認識と丹田呼吸

 旅の目的地に間違いなく無事到着するために大事なことが二つあります。一つ目は出発点を正確に認識していること。二つ目は正しい方向に向かっているかということです。
 人生を旅にたとえれば、同じことが言えます。一つ目は自分の今居る位置を正しく知っていること。そして二つ目は方向が狂っていないことです。
 普通の旅ですと、どちらも難しいことではありません。〇〇県〇〇市〇〇町○丁目○番地から出発することは、正確にわかります。方向だって、どこにも標示がありますから間違えることはありません。
 ところが人生の旅となると事情が違ってきます。まず自分の位置を正しく認識することが難しくなります。自己防衛機制、劣等感、被害者意識などがからまって、正しい自己位置が自覚できなくなってしまうのです。そして自己位置認識の狂いが、最初のボタンの掛け違いとなって、あらぬ方向に向かって進むことになってしまうのです。
 
 自己位置認識のわずかな狂いは、先に進むほど大きくx増幅されて、当初の目的地とは全然違うところに迷い込むことになります。
 自己防衛機制、劣等感、被害者意識とは、心の乱れに外なりません。心の乱れが、真実を見失なわせるのです。その心の乱れを鎮めるには、呼吸を調えることが最も有効な手段です。 丹田呼吸には心を鎮め浄める力があるのです。丹田呼吸の修練によって心を鎮め、浄めて、常に正しい自己位置に目覚めていましょう。
 
 
 
 
 
プロフィール

鈴木光彌

Author:鈴木光彌
1943年(昭和18)東京都葛飾区水元に生まれる
法政大学法学部卒
在学中は応援団に所属し、副団長を務める
今も、人々に生きる勇気と喜びを鼓吹する応援団を任じている
昭和55年、公益社団法人調和道協会に入会し、丹田呼吸法を学ぶ
以来研鑚を重ね、現在養根塾を主宰して活動中
著書:「丹田湧気法入門」柏樹社(共著)、「丹田を創る呼吸法」BABジャパン、「丹田を創って『腹の人』になる」小学館、「藤田霊斎 丹田呼吸法」佼成出版社

【養根塾】
◇会場: 高輪アンナ会館
東京都港区高輪2-1-13
都営浅草線 泉岳寺駅A2口徒歩5分
◇日時:毎週火 1:00~3:00PM
◇会費:1000円/1回
自由ヶ丘教室 第2・4金 10:30AM
若葉教室 毎週金 6:00PMも併設
お問合せ 090-5405-4763 鈴木
Eメール
mitsuya@wf7.so-net.ne.jp

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